西東京ミステリ倶楽部

暇な女子大生がおすすめのミステリを紹介したり、トリックをこきおろ・・・批評したりします。

井上真偽作 聖女の毒杯感想

今日めっちゃおっきい秋刀魚が売ってて、一昨日食べたばかりのような気もしなくはなかったけれども、嬉しくなって買いました。

 

ちょっと贅沢して酢橘も買いました。自分で買ったの初めてな気がする。

こういう贅沢っていいね。

 

 

話は変わるけど、酢橘って巣立ちとかけて句になりそうだなぁって、スーパーの袋ぶらさげて帰りながら思ったんだけど

で調べてみたら(調べてみるまでもなく)酢橘の旬って九月なんだよね。

これじゃあ巣立ちの季節に合わないね。

ハリーポッターなら合うね。ホグワーツは全寮制で秋始まりだもんね。

 

まあそんな感じで、

今回は井上真偽さん作の「聖女の毒杯」、まいります!

まずネタバレしない程度に。全体的に登場人物のラノベ感が強いなあという印象。私はラノベはほとんどノータッチだったので、まあ違和感はあったけど、若者だからノリについていけました。それにしても、真偽さんの中国知識すげえ。

ミステリとしての出来は・・・70点くらい。

 

前作「その可能性はすでに考えた」と同じ形式で、事件関係者が考えた事件のトリック犯人を、「いやそれだと成り立たないんだよ、なぜならこうこうこういう理由でね・・・」って探偵が否定していく流れです。

 

この流れ、なんか既視感あると思ったら・・・・・米澤穂信さんの古典部シリーズ二作目の!愚者のエンドロールに似てるんだ!!!

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず否定のロジックについて。「こんなトリックだと読者に石投げられるけど実際これでも矛盾はない!」っていうトリックを否定していくんだけど、まー憎らしいほど論理的。鮎川さん的に、理を詰めて詰めて詰めまくった感じで私はとっても好きです。人の行動なんてこんな論理的にいくはずない!って意見もあるかと思うけれど・・

 

そもそもミステリって、超現実的なファンタジーなんじゃないかなと思っています。ファンタジーだから警察は都合よく到着が遅れるし、名探偵がいれば事件が起こる。この本のミステリの側面としての一番のファンタジー性が、「登場人物はすべて合理的に行動する」っていう原則なんだろうなあ。

 

本の中盤までであらかたのトリックが否定されたところで、まあ犯人は花嫁父なんだろうなと予想はついた。トリックは予想外というか、最初に出てきた銀彩説でしたね。うーん・・・。

まず、毒の一人分二人分って、そんなうまくいくかね、とは思った。というか前半の否定のくだりが鮮やかに論理的だったから、このトリックの一種の粗というか、粗とは言わないまでも非現実性が目立ったなあ。例えば花婿がしっかり銀彩部分をなめてたら、いくら二人前のヒ素盛ったって次の人殺せない・・・とは思ったけど、よく考えたらアミカに罪着せて花婿殺せればいいわけで、これはこれでよいのか。逆に豪快に飲んでも思ったより銀彩部分の毒が流れ落ちなかったらアミカまで死んでおじゃんになるから、花嫁父が盛ったのは一人前じゃないかな。花婿父が死んだのは歳と運の悪さかもね。

 

 

って考えたら、犬のトリック必要でもなかったと思うんだけど(犬は銀彩部分をなめた、で解決)、トリックの出来としてはこちらのほうが巧い気がする。

 

 

ともかく最後には「どうやって飛び石方式に人を殺せたか」ではなく「どうやって毒を盗んだか」に発想を転換したのはまあ良かったと思う。罪を擦り付ける云々の矛盾にもちゃんと理由がついたし。

 

 

トリックについて話してるとつい他作品の似てるトリックについても語りたくなってしまうけど、ネタバレになってしまう・・・(´・ω・`)

 

この本で一番うまいなあと思ったのは、ピザによる花嫁犯人説の否定かなあ。

伏線もばっちりだったし。

 

中国知識も楽しかったし、全体的に整合性がある、よいミステリでした。

 

 

それではそろそろお時間です。

次回はハリイ・ケメルマン著「九マイルは遠すぎる」

おすすめ度 ミステリ初心者★☆☆☆☆

      ミステリ上級者★★★★★です!お楽しみにね!